<リプロダクティブ・ヘルス・サポートの目指すもの>                    妊活サポートを通じて社員同士、社員と経営者の橋渡しを

                                                                                妊活サポート・アドヴァイザー   

 

生殖心理カウンセラー / がん・生殖医療専門心理士  

臨床心理士                星山千晶

 

  国内で不妊治療を受けているご夫婦は稀ではなく、どの企業にも存在します。介護をしながら、子育てをしながら、病気治療をしながら働く社員がいるように、不妊治療をしながら働く社員も、ごく身近な存在ともいえるでしょう。

 

  しかし、不妊治療は個人的な側面も強いため、これまではあまり大きくは取り上げられてきませんでした。周りの人には言いにくい、言いたくない、という当事者の思いもあり、働きながら不妊治療を受けている社員がいても、そのサポートについてはとりあげられずにきたのが実情だと思います。

 

 不妊治療は通院に必要な回数や時間が読みにくく、仕事への影響、上司や同僚との関係から、やむを得ず仕事をやめるケースが多くあります。治療のために退職することは、一生懸命に働いてきた仕事上のキャリアをいったん、中断することを意味します。

 

  仕事のストレスで体調に影響を受けていた場合など、退職することで心身の調子が安定する場合もありますが、収入の減少は検査や治療を進める上ではマイナスの側面もあります。

 

 では、企業にとってはどうなのでしょうか?

 

 通院のため、遅刻や早退が増えたり、急な欠勤でとまどう。何年もかけて育ててきた社員が、突然、退職してしまうなど、さまざまな影響が出ていることが考えられます。社内の人間関係にも、変化が生じている可能性があります。

 

 こうした背景から、厚生労働省から「働きながら不妊治療を受ける従業員へのご理解をお願いします」という提言が出されたものと思われます。

 

 このようなお話をすると、社員にとっての事情や考え、社員のニーズばかりを重点的に考えているようで、企業としてサポートが求められていることはわかったが、どのようにしたらよいか、正直、荷が重いと考えられるかもしれません。

実際、業務上、難しいと考える企業様もあることでしょう。

 

 しかし、社員の不妊治療と仕事の両立を支援することは、長期的に考えるとメリットの多いものであり、取り組む価値は十分にあります。

 

 私は、これまで生殖心理カウンセラー(不妊治療をはじめとする、生殖医療専門の心理職)として多くのみなさまにお会いしてきました。仕事と治療の両立に悩む方、治療に専念しようと退職したが、それでよかったのかと悩む方など、みなさん、とても真剣に仕事のことを考えていました。勤務先のこと、上司・同僚のことなどを考え、さらには取引先との関係も考えている方もおられました。

 

 できれば、仕事も続けたい、職業人として貢献したい、という思いがありながらも、仕事との両立がうまくいかず、周りにも迷惑をかけたくないという思いから、泣く泣く退職していった方々...。

 個人の思い、個人のキャリア形成の問題、人生設計、と思われる向きもあるかと思いますが、それらは、仕事上の成果や取引先との関係、企業の業績アップにも関連するところがあるのではないでしょうか。

 目的意識を持って真剣に取り組む社員の存在は、企業にとってもプラスになることでしょう。

 

 そこで、リプロダクティブ・ヘルス・サポートでは、仕事と治療を両立させたい社員と勤務先の企業との「橋渡し」をし、双方が寄りお互いを理解し、企業も社員も成長・発展していけるよう、支援することを目的として活動をしていきます。